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栄一センが止まらなかった結果小説書いていました。
何かもう表においてもいい気がしてきたぞこのカプ。
ああ迷走。

センは栄一に友情以上恋愛未満の感情を抱いていて、それを自覚していないといい。
けどシンの姿で栄一に思いを寄せる抵抗感だけはどこかにあって、シンのふりして出かけたときのことを話す際にも、栄一とのやりとりは何となくはしょってると良い。
ちなみに栄一の方もセンが気になってる部分はあって、「何かシンにどきどきするんだけど俺おかしいのかな……アッー!」みたいに思ってるんだけどそんな設定を出す機会は存在しません。
というか栄一のノーマルカップリングの広さに嫉妬(#・∀・)

ちなみにタイトルの元ネタ↓
【ニコニコ動画】テトミクリンレンオリジナル曲「星が弧を描くように」
小説を読む方は続きからどうぞ!

【どうでもいい追記】
今ものすごくどうでもいいこと思いついた。
僕が一人シンでも この世界は変わらない
うちのシンセンじゃないと使えない掛詞。

もしかすると「割れた鏡」は後で表ブログのウェブサイト版作ったらそっちに移すかもしれない。
ずっとウェブサイト版は作りたいと思ってて、スペースは借りてるんですよね。
今まで運営していたオリジナルサイトと併合してちゃんとサイトの形にしたいなぁ……って思ってるんですけど、htmlいじるのが面倒くさくてやっていません(おま
(再掲載の折に唐突に出してしまった川に落ちたイベントとかの伏線を追加して、文体の矛盾とかも書き直したいなぁ。
無駄に書きながら設定固めてるんで、だんだん矛盾が生じて苦しくなってくるっていう。
ちゃんと考えてから書かないとあかん!!)


 息を潜めて、壁に耳を当てる。虫の音さえも聞こえない静かな夜、隣の部屋から聞こえる物音はなく、センはひそかに安堵した。
 二つの部屋をさえぎる壁はそこまで薄くなかったが、静寂の中人間の立てる物音が存外うるさいことをセンは知っている。昼間だったら気づきもしない床がかすかにきしむ音で、シンがまだ勉強しているとかいないとかが判るのだ。近日中にテストは何もないはずだから、今日は早めに寝たのだろう。
 ただし、シンの部屋の物音がこちらに届くということは、センの部屋の音もシンに聞こえるということだ。センはなるべく壁に遠いところを這うようにして部屋を横切り、ゆっくり部屋を出る。
 当然のことながら廊下は真っ暗だった。だが電気をつけるわけにもいかないので、センは手探りで部屋のドアを閉める。かすかな振動できちんとドアが閉まったのを確認すると、足を一歩、階段へと踏み出した。
 慎重に、床を鳴らさないように、四つん這いになりながら階段を下っていく。一階に明かりがないこともきちんと確認する。もし、万が一父親と――あの男と遭遇してしまったら、大変なことになるからだ。
 いつも連絡なしに帰ってくるあの男は、夜中にふらっと帰ってくることもある。夜中に起きていることがばれたらどれだけ怒られることか。
 万に一つでも、明らかに外に出るための服を見られてはならない。センは自分の身体を覆い隠すようにして、タンスから引っ張り出しておいた毛布を身体に巻きつけた。
 階段を降りきると、センは居間の方に目配せしながら玄関に足をかける。床に用意しておいたサンダルを置いた。靴がないと、こっそり出かけたことがばれてしまう。
 周りの靴を蹴飛ばさないよう気をつけながらサンダルに足を突っ込むと、はやる気持ちをこらえつつ玄関の鍵を開ける。かちりという音は思いのほか大きく響き、慌てて後ろを振り返った。
 沈黙を守って数秒、階段の上の方を見守るが、シンが起きてくる気配はなかった。センはふうと息を吐いて、ドアノブをひねった。
 ドアを押し開くと、冷たい春の夜風がふわっと舞い込んできた。じっとりと水分を含んだ空気が一気に体温を奪っていく。センは毛布の中に身を縮め、ドアの隙間からさっと外に出る。今度はすぐに鍵をかけ、素早く玄関から離れた。
 車庫に車はなく、家の前を走る細い道路に見える光もない。センは門を抜けると、父親がいつも車で帰ってくる方向とは反対の道を走り出した。
 家から出た。センの胸はそのことだけで高揚してきていた。おしとやかにしろと、ほとんど外で遊ばせてもらえなかった、牢屋のような家。
 外に出てしまえばもう何でもよかった。帰り際にあの男に見つかって怒られようが、シンを起こして問い詰められようが。
 とにかくセンは、今日の秘密の約束が果たせれば、それでよかった。
 センはかぽかぽとかかとを打つサンダルも気にせず、全速力で通り慣れた道路を駆け抜ける。巻きつけただけの毛布が、風にはためいてばたばたとなびく。毛布が飛ばされないようにしっかりと握り締めながら、センは街灯が点々と灯るだけの夜道を急ぐ。
 走る、君の元へ。今まで歩いたことのない時間帯のせいか、そこは通ったことのない道のように思えた。

 隣町の川原に着いたときには、センの息はすっかり上がっていた。大きく息を吸うと冷たい空気が入り込んでくるが、それが心地よく感じるくらいに体も火照っている。走っている間に毛布は無用になって、無造作に地面に引きずられていた。
 いつもなら自転車を使わなければ来れないような距離だ。センは自分でも信じられないくらい長時間、走り続けていた。荷物がない分身軽とはいえ、足もがくがくと震えだしている。
 しかし、家から抜け出して約束の場所へと向かう高揚感から、センは不思議なほど疲労感だけは感じていなかった。むしろ表情筋が壊れたみたいに、その顔には笑みが貼り付いている。
「遅い!」
 既に川原に着いていた相手は、土手を走っていたセンを見つけると川原から這い上がってきた。川の傍にはほとんど街灯などなかったが、暗さに慣れきった目は夜空の光だけで互いの姿を認識していた。
「悪い、思ったより距離あったわ」
 満面の笑みを散らしたままの表情では微塵も謝罪の色は見えないが、センの意思では笑みを止められないので仕方がない。もっとも、センが笑っているのはいつものことなので、相手はわずかに呆れた顔をするだけだった。
「思ったよりって、いつも来てるじゃ……うわっ」
 腕をつかんで初めてセンが汗だくであることを知り、彼は慌てて手を引っ込める。一瞬センについた液体が何なのか認識できなかったのか、数秒自分の手のひらを見つめた。
 はっと我に返ると、彼はポケットに手を突っ込みハンカチを引っ張り出す。そしてそれを問答無用でセンの顔面に押し付けた。
「わぷっ」
 ハンカチでがしがしと顔を拭かれ、センは息ができなくなった。思いっきりこねくり回される鼻が痛い。
「栄一、苦し……」
「こんなに汗だくで風邪引いたらどうすんだ! まだ夜は寒いんだぞ!」
 センの訴えなど聞き入れず、彼、栄一は問答無用で全身を拭き続ける。顔、首、腕、出ているところをあらかた吹き終わった頃には、ハンカチは絞れるくらいに水を含んでいた。
 汗がなくなって少しすっきりすると、夜風の冷たさが再び感じられるようになってきた。センは身震いするが――まだ服の中に汗が残っているので毛布をまとうには嫌悪感がある。
「服の中気持ち悪い」
 ぽつりと訴えると、「それだけ汗だくならな」と呆れた声が返ってくる。さてこの汗をどうしたものか。ぼんやり考えていると、センの腕がぐいっと引かれた。
 センの腕を引いて、栄一は川原を下っていく。足元は全く見えないが、遊び慣れた川原は感覚だけで何となく足場がうかがえる。二人はひょいひょいと石の上をまたぎ、川の近くまで降りてきた。
 足の裏に石とは違う感触が伝わってきて、センはそこにビニールシートが敷いてあることに気づいた。そういえば比較的家の近い栄一が、色々そろえてきてくれることになっていた。ビニールシートの敷いてある場所には他にも栄一の荷物が置いてあって、栄一はそこからタオルを取り出す。
「手ぇ挙げて」
 言われたとおりにセンが手を挙げると、タオルを持った栄一の手がセンの服の中に入ってきた。
「へぁっ?」
 ビックリしたセンが足を一歩後ろへずらすと、うっかりバランスを崩しそうになる。後ろへ倒れ掛かる体を、栄一がぱっと抱える。平均的な体格より圧倒的に華奢なセンの体は、栄一の腕の中にすっぽり納まってしまった。
「何やってんだよ」
 少しイライラした口調で言う栄一に、センはまごついた口調で答える。
「……自分でやる」
「何女々しいこと言ってんだよ」
 お前らしくもない、と笑いながら付け足す栄一に、センは心の中で「女なんだけどな」と呟いた。
 センがシンの振りをして男友達に混じっているのを知ってるのは、シンだけだ。そんなこと言えるはずもない。センはシンになりきることで、どうにかあの家から抜け出す法を得ているのだから。
 それでも、弟に成りすましているセンの実年齢は十四である。中学も最高学年に上がるセンの中に乙女心といったものがないわけではない。年齢に反して一向に女らしくならない体(主に胸とか)のおかげで少年の振りをしてもばれないわけだが、栄一に体を拭かせることには抵抗があった。
 だがいささか空気を読めないところがある栄一はそんなセンの心中など露知らず、タオルを服の中に押し込んでいく。タオルが胸の上を通過して、びくりとするが、幸い栄一は違和感を覚えている様子はなかった。全く気づかれないこともそれはそれで複雑だ。
「下も拭く?」
 今度はさすがにタオルを手渡されて、ほっとする。胸の発育がよろしくないことも手伝って上の下着はつけていないが、ズボンの中はさすがに自分の少女用の下着を身に着けている。暗闇の中では見えないだろうが、心臓によくないことは確かだった。
 全身の汗を吹き終えると、ようやく体の火照りも落ち着いてきて、センは改めて毛布を肩に羽織った。肌に触れる柔らかな感触がほわっと体を包み込む。自分の、偽った体を隠せる安心感もあった。
「タオルさんきゅ、洗って返す」
「別に良いよ」
「次に会うときに返すから」
「はいはい」
 短い会話の中で、さりげなくまだ自分がこの中にいられることが確認できると、嬉しくなる。センは自分の口元を毛布で隠してひそかに笑みをこぼした。
 学区が異なる栄一たちと会える機会は多くないし、一人遠くに住んでいるセンには約束を取り付けるのも一苦労だった。お互いの連絡手段なんてないから、別れる前に次の約束をしなければならない。
 一度一度の出会いが鎖のひとかけらみたいなもので、一つでも欠いてしまえば鎖は途切れてしまう。次もまた会える。鎖がまだ繋がっているという感覚は、センの心の支えでもあった。
「じゃ、そろそろ準備すっか」
「おう」
 栄一がビニールシートの上に腰を下ろし、センもその隣に座る。川原にシートを敷いただけなので、下は石がごつごつしてて痛かった。毛布を尻の辺りまで引っ張って、どうにか石を安定させようと足を動かす。
 シートの下でじゃらじゃらと石を転がしていると、栄一に双眼鏡を手渡された。栄一の手元には、双眼鏡がもう一つ。これが、二人が夜中に抜け出してきた理由だった。
 ――流星群が見たい。そう呟いたのはセンだった。
 ただしセンの住む住宅街は明るすぎて星は全然見えなかったから、これまで流星群はおろか星もまともに見上げたことはなかった。そんな中で流星群が見られるというニュースを知ったときも、「実際に見よう」という発想などセンの中にはなかった。
 仲間内でも実際に寒空の下流星群を見ようと言い出すものはおらず、センの呟きは独り言で終わるはずだった。栄一が本気にしなければ。
 誰も集まらないなら二人だけでいいから見よう、川原のあたりは街灯もなく視界が開けているからよく見えるはずだと、あれよあれよという間にことを進めてしまった。
 夜中に家を抜け出すことなど不可能だ……と、始めはほとんど行く気がなかったセンも、栄一が具体的な計画を立て始めるとだんだん可能であるような気がしてくるようになった。
 いつまで続くか判らない栄一たちとの「日常」。何かが終わってしまう前に、何かをしたいというセンのひそかなる願いが、栄一に後押しされる形でいつの間にか芽を出していた。
 こうして栄一の隣にいると、改めて家で寝ているはずの自分が別の場所にいることを実感して、何だか幽体離脱でもしているような気分になった。
「ぼんやりしてないで見てみろよ」
 急に後ろに重みがかかり、センはそのまま後ろに倒れた。センが川原の石に頭を打つことはなかった。頭にぶつかった柔らかい感触で、栄一がリュックで簡易枕を作ってくれたことに気づく。
 そして仰向けに寝転がった真正面に、見たこともない輝きがあって、センは思わず「わあ……」と感嘆の声を漏らした。
 真っ黒の大きな器の中に、星がたくさんちりばめられていた。大小さまざまな光が浮かんでいて、その中には赤い星や青い星もあった。しきりに瞬く星がきらきらと夜空を彩っている。
 知っている正座もちらほら見られて「本当に空に浮かんでいるんだ!」と思うのもつかの間、何せ星の数が多いから、あっという間に見失ってしまう。ここまで暗く、そして明るい夜空を、センは見たことがなかった。
 視界の端にかかる影は何もなくて、センは何もない空間の中にぽんと投げ出されてしまったかのような錯覚を覚える。背中の石の感覚も思わず忘れかけて、センは足場を探して身をよじった。
 手を握られて、空に舞い上がったセンの体が安定感を取り戻す。手の感触で、栄一がセンをしっかりと捕まえてくれているのが判った。
「栄一の手、冷たい」
「待たされたからな」
「ごめんて」
 熱を送り返すように、センは栄一の手を握り返す。栄一が小さく「手、暖かいな」と呟いて、センは笑みをこぼした。
 センを閉じ込めるものはどこにもない、広大な空間。そして、自分の居場所を教えてくれる、冷たいけど優しい手のひら。ここにはセンの欲しいものが全部あると思った。
「ほら、春の大三角」
「うん」
「北斗七星」
「知ってる、教科書で見た、ひしゃく形」
「そう」
 栄一の指差す星を見ながら、センはその星まで飛んでいけるような気がしていた。センは今、羅針盤を握り締めてどこまでも輝きを追い求めて行ける、自由な旅人だった。
 センは身を傾けて、こっそり栄一の傍に寄る。栄一もセンの方に身を傾けてきたので、二人の体はぴったりとくっついた。冷たい石にじわじわと体温を奪われていたけど、センは全然冷たい気がしなかった。
「栄一は星のこと詳しいんだな」
 口を開くと、白い息が宙に舞う。呟くような声でも、至近距離にいるからよく相手に届く。
「んー、ユズが……近所の子供が、やたら星のこと聞いてくるから」
 栄一の口からも白い息が舞って、それが星を生むガスみたいに見えて、綺麗だなとセンは思った。
「あ」
 栄一が空を指差して、センは栄一の方を向いていた視線を空へ戻す。栄一が何も言わなくても、すぐに何を指差しているかが判った。
 白い筋が空を横切った。瞬いたと思ったら、落ちて、すぐに消えてしまう星。しかしそれは一つではなかった。
 いくつもの白い筋が層を成して夜空を落ちていく。消えた星を追ってすぐにまた新しい星が瞬き落ちていく。星が群れを成すようにして、どこかへ向かっていこうとしているみたいだった。
 どこからか来た星たちの果てしない旅路。その断片を、センは今目にしているのだと思った。
「あー……」
 綺麗、と言おうとした口からは、よく判らないうめき声しか出てこなかった。初めて見た光景はセンの感覚の枠組みを越えていて、言葉にならない。
 栄一も似たような状況で、何も言わずにただ夜空に視線を投げかけていた。静かに高揚しているのが、手の握る強さで伝わってくる。
 こんなに多くの流れ星があったら、どれだけ願い事が唱えられるだろうか。そう思ったが、肝心の願い事は口にすることができなかった。
 ずっと、栄一と手を握って。ここに、いたい。
 その願いは絶対に叶わないことを、センは十分すぎるほど理解している。時間が過ぎれば、夜は明けてしまうし、流星群は見えなくなってしまう。センは広大な夜空ではなく、センの場所へ戻っていく。
 叶わない願いの代わりに、センはどこかへ消えていく星たちに、「いってらっしゃい」と声をかけていた。
 あの星たちはこの星からは見えないどこかへ行ってしまうけれど。そのどこかは光のたくさんあふれる賑やかな夜空ではなくて、センの家から見上げるような光のない夜空かもしれないけれど。どうかいつまでも目指すべき光を見失わないように、精一杯の思いをこめて。
「綺麗だな、シン」
 同じ夜空を見上げて、栄一が呟く。けれど、栄一から向けられる言葉は、自分に対してのものなのに、自分に対してのものではなくて。判っているのに、センは答えに詰まってしまう。
 今、確かに栄一の隣にいるのはセンだけれど、センが今ここにいることはセン以外に誰も知らない。センがシンとして過ごした日々は、誰も知らない。
 それでも、星が弧を描くように、センの過ごした日々の軌跡が、誰かの心の片隅に残ればいい。栄一がセンのことを判らなくても、自分と過ごしたこのわずかな時間のことを、覚えてくれればいい。
 淡い思いをこめて、センは「うん」と頷き、栄一の肩に自分の頭を乗せた。


FIN.

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